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テニス同好会、テレビ取材を拒否する!?|平尾昌彦

yasunoritanaka
4月14日
読了時間: 4分

原題:ある日の練習風景

テニスブームの実態を探るため、「某大学テニス同好会」を訪れたテレビ局のレポーター。ところが待ち受けていたのは、撮影を警戒する幹部と、「ボールボーイ、声出さんかー」「金網にもたれるなー」と怒号が飛び交う練習風景だった――。昭和56年、同好会の練習にもっと緊張感を、と願って書かれたユーモアたっぷりの架空取材記。笑いの向こうに、当時のコートの空気まで聞こえてきそうな一篇です。

テニスブームを徹底取材


レポーター

本日は、現在スポーツ界で最高のブームを呼んでいるテニスの取材に行ってみたいと思います。

このテニス、今や猫も杓子も、赤ん坊からあのおばはん、いや若き主婦達を黒幕に、安らかな老後を送ろうとしていた人までも巻き添えにして、世界にはびこっておるのです。

ではテニスとはどのようなもので、どこに魅力があるのでしょうか。(あるいは見栄かも。)

それを徹底取材してみましょう。

狙うは「テニス半分、遊び半分」の同好会


レポーター

今日、訪れようと試みるのは、あのおばはん連中ではこちらが太刀打ちできないであろうし、ましてや各学校で活動中のクラブの人に聞きにいくのは気持ちが暗くなるので、各大学内で組織されているテニス同好会であれば、テニス半分、遊び半分で、こちらの条件にピッタリではないかと、私の独断と偏見により、これから某大学テニス同好会の練習風景及び関係者の話をうかがいに行きたいと思います。

レポーター

金網に囲まれたクレーコートへ取材に訪れたレポーターと大阪大学テニス同好会の学生たち

みなさん、まもなく現地に到着する予定です。

聞こえてきました。あのジェット機の音ではなくて、ボールを打つ爽快な音。

見えてまいりました。

金網に囲まれたジャングル、いやコートが。

まずは練習風景をじっくりと見ていただきましょう。

「困りますねえ」


幹部「困りますねえ。(また女の子を撮りに来やがった。)」

レポ「あ、この同好会の人ですか」

幹部「困ると言ってるんです。撮影されると」

レポ「私は某放送局のものなんですが、テニスについてちょっと……」

幹部「困るんです」

レポ「練習内容などは?」

幹部「困ると言ってんだろ、聞こえねえのか」

レポ「何人ぐらいで……」

幹部「警察へ行こうか」

レポ「警察! なぜです。撮影ぐらいいいじゃないですか」

幹部「だめ」

レポ「この放送見て入ってくる学生がいるかもしれませんよ」

幹部「おまえ本当に放送局のものか」

レポ「ええ、そうですよ。はい、名刺」

テレビ取材班の撮影を止めながら練習中の学生にも指示を出すテニス同好会の幹部

幹部「ふん、こんなものあてになるか」

レポ「でも、ここに名刺が」

幹部「このごろこういうふうなんが増えてねえ。うちとしても困ってるんよ」

レポ「でも、私は本当に放送局の……」

幹部「ボールボーイ、声出さんかー。いや失礼、でも今日のところはお引きとり下さい」

レポ「そうですか、では」

今度はフィルムをめぐる攻防


幹部「ちょっと待って。フィルムはこちらにいただけますか」

レポーター「え、少ししか撮っていませんし、まだほとんどフィルムも残っていますので、それは……」

幹部「フィルム」

取材に答える暇もなくテニスコートの練習に大声で指示を出し続ける同好会幹部

レポ「このフィルム高いんですがねえ」

幹部「フィルム」

レポ「それでは、お金と引き替えに」

幹部「金なんか出せるかー。(うちの会計、金にはうるさいのに。)」

レポ「では、だめです」

幹部「だめ。それじゃ警察へ」

レポ「ちょっと待って下さい。もういいですよ。はい、これフィルム」

幹部「そうですか、これはどうもご丁寧に」

やっと取材開始……と思いきや


レポ「それじゃ、フィルムも渡したことですし、取材にとりかかってもよろしいでしょうか」

幹部「取材? そこでかたまって話をするな! ……取材といいますと」

レポ「同好会内のテニスについて知りたいと思いまして」

幹部「金網にもたれるなー」

レポ「練習日とか、参加人数とか、一年間の計画などを……」

幹部「声が小さいぞー」

レポ「どうして同好会に入ったのか、なぜテニスをしようと思ったのか」

幹部「センターにボールたまってんぞー」

レポ「おとりこみ中なようですので、また来ます」

幹部「ええ、そうして下さい」

レポ「……」

後書き


上記はすべてフィクションですので、あしからず。

ただ少しでも、同好会内に緊張できるムードが生じれば幸いです。

S56・5月29日 作者記す。

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