文学部は謎の集団!?|都筑葉子
原題:文学部レポート
締切を迎えても真っ白な原稿用紙を前に悩む都筑葉子さんに、三木くんが投げかけた一言。「文学部はオレらにとっては謎の集団や」。こうして始まった文学部レポートは、学生たちのサークル活動、読書量、語学への熱意、ファッション、男女関係など、話題が次々に飛び回ります。文学部らしく見られない自分へのぼやきや、テニスに夢中で授業を自主休講してしまう日常も、ユーモアたっぷり。昭和の阪大文学部の学生生活を、同好会の仲間ならではの視点で紹介する、明るく軽妙なキャンパスエッセイです。
真っ白な原稿用紙と、三木くんの一言
5月31日の朝になっても、未だ真っ白い原稿用紙が無情にも机の上にちょこんと座っており、何を書いたらいいのか悩みまくっている所に、三木くんが、「文学部について書けや。文学部はオレらにとっては謎の集団や。」という無責任なアドバイスをしてくれました。
そこで、私の文は、話が一定方向に進まず、あっちこっちに勝手に飛びまわるのでどうなるかわかりませんが、とにかく、我が文学部について書き始めてみたいと思います。
「文学部です」と答えると、なぜか意外な顔
同好会入会当時から先輩方に「学部は?」と聞かれて、私が「文学部です。」と答えると、誰もが決まって「意外だ!」という顔をなさいます。
私は、高校時代から理系に見られることが多く、大学でも一番多く見られるのが工学部、次いで基礎工、理学部、薬学部、法、経と移り、冗談にさえ文学部という名前は出て来ないのです。
そんなに数学が出来そうに見えるのかと思えばそうではなくて、「一人静かに本を読むようには見えない!!」というのが、大方の理由だとか……。
もちろん、私の阪大文学部志望の動機が、二次に数学がないからという、単純かつ情けないものである以上、あんまり反論することもできませんが、文学部というのは、必ずしも物静かな文学少女の集まりではないのですゾ。
文学部のサークル事情と、ちょっと軟弱な男子たち
まず、所属サークルを分析すると、やはり圧倒的に文化系が多く、特にESSが一大勢力を形成しており、他にフロンティア、デッサン研究会、PACなどが多いです。
女子で体育系サークルに所属しているのは、軟庭の三人と硬庭の私一人という淋しさです。
また、無所属の人も男子には多いようです。こういう人は、一体何が楽しくて学校に来ているのかしらと真剣に悩んでしまいます。

体格を分析すると、男子も女子も細い人が多く、特に男性は、スタイルが良いというより、軟弱という感じで、逞しい人というのは少ないです。(主観的ひがみがはいってないとは言えませんケド……)
下宿生の中には、あの松本さんより軽い人までいるんですヨ!
20才そこそこの若い人に「ボク、体育は苦手です。」って顔をされると、何だか悲しくなってきます。
読書とディスカッション――さすが文学部!
しかし反面、彼らの読書量は全く尊敬に値いたします。
一週間に8冊という人はまあ特別としても、一週間に2冊というのが一般の文学部ペース。
「この人が!!」と思うような人でも、大抵1冊は文庫本をカバンの中に入れているのです。
無骨そうな男の人がゲーテの詩集を読んでいる姿を想像してみて下さい。
また、単に読むだけでなく、その感想を討論する人までいるのです。
そこまで行かなくても、いわゆるディスカッション好きが私の友人には沢山いて、自分の性格等について、いろいろと哲学的に分析しては、意見し合うのです。
このへんになると、もう私にはとてもついて行けなく、自分が文学部の異端児であることを痛感してしまうのです。
大体、いつも「今日、雨降るかなあ……。降ったらテニス行かれへんなあ……。」とか、「眠たいヨオ」ぐらいしか考えていない単純この上ない私にとって、自己の内面の追求などまるで別世界の話題なのですから……。
麻雀の鬼、反核・軍縮、幻の車線変更
でも、こういう人達ばかりではありません。
自称「麻雀の鬼」とばかり、週5日程雀荘に通うお兄さんや、反核・軍縮に命をかけてる少年、幻の車線変更と呼ばれるカー・テクニックを駆使してタクシーにぶつけた男の子と、ごくあたり前(?)の人も沢山いますので、どうぞご安心下さい。
文学部の女の子たち
Try Againの読者の3分の2は男性ですので、女の子の話を少しいたしましょう。
阪大の女子の半数は、文学部と薬学部に集中しています。
薬学部では圧倒的に女子が多いそうですが、文学部は男女半々、高校と同じような明るい雰囲気なので、他学部の男の人が「女の子がいない!」と嘆くのが、全然理解できませんでした。
文学部の女子は薬学部に比べて多少子供っぽいという感じがあります。
お化粧している人も少ないですし、(最近増えてきましたけど)服の好みが保守的というか、あまり流行を追うということをしません。
徹底して自分独自のファッションを極めている少数派(大体は下宿生です)もいますが、大抵は私を始めおとなしい箱入り娘が多いようです。
語学への執着心と、合コン事情

また、女子は一般にまじめで、語学の予習はもちろん、学部に入ってからのために、2、3か国語を習っていたり、ラテン語を取っている人までいるのです。(ちなみに本年度のラテン語Bの受講者は二人だそうです。)
とにかく、さすが文学部だけであって、みんなの語学に対する執着心だけは、他学部に比べて自慢できると思います。
私ですら、予習をしていかないことに痛む良心をまだ持っているのですから……。
文学部では合コンというものがありません。
男女半々のため、大体内輪でやってしまうのです。
たまに他学部からのお誘いがあっても、男子がむくれるので、参加できませんでしたし、最近では、声すらかけてもらえなくなり、私は、こういう方面はもっぱら同好会に依存しているのが現状です。
二回生になって、ようやく文学部の実感
二回生になって、学部の授業を取りに行けるようになりました。
ですから、例の文・法・経のコの字形校舎の中を、たまにうろついています。
私たちは、三回生まで学科が決まらず、専門もないので、文学部という自覚があんまり(というより全く)無かったのですが、あの校舎の中で国塚さんと出会ったり、英語学で岡崎さんや奥村さんと同じ授業を受けたりしていると、「私って文学部やったんやなあ。」と、しみじみ思うのであります。
文学部は暇じゃない!――でもテニスも大好き
文学部は、みんなに暇の権化みたいに言われていますが、それは大変な誤解です。

5月中は、フレッシュ&ミックストーナメントのために忙しくて、心ならずもいくつかの授業を自主休講にしてしまいましたが、まじめに出席すれば二回生でも週15時間と決して楽な時間割りではありません。
そして、去年一年間、あの庄内コートから5時間目の教育心理学に戻ったという実績からも明らかなように、私は、まじめなのです!
ただ、予習するのが嫌いで、眠るのが大好きなだけなのです。
文学部の異端児から、最後にひと言
最初に予告した通り、ホップ・ステップ・ジャンプとばかり、話題が暴れ回る、まさに散文になってしまいました。
書いた本人にも文学部の実体は余計こんがらがってしまったので、読む人にはなおさらだと思いますが、要するに、私が文学部というのは一種の間違いであって、私を見て文学部を判断してもらっても困るということです。
また、ここに書いたことは、私たちの学年のみを対象にしたということも付け加えておきます。
岡崎さん、奥村さん、国塚さん、住田さん、情けない後輩で、ごめんなさい。





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