勝つために必要なのは、技術だけではない|石川和男
原題:スーパーテニスへの道
「勝利の味ほど忘れられないものはない」。テニスの勝敗を分けるのは、技術だけではなく、精神力、相手を見る目、そして流れを変える工夫だ――。孫子の兵法からテレビゲーム、パチンコ、麻雀までを自在に引き合いに出しながら、石川和男さんが独自の「勝つためのテニス論」を展開します。真面目なのか冗談なのか、その境目も含めて味わいたい一篇です。
勝利の味は忘れられない
一度、人間を喰った虎が、人の肉の味が忘れられずに、人里を夜這いし、人喰い虎となって暴れまわるという話は、昔よくありました。
今は、ゾンビの時代です。
しかし、勝利の味ほど忘れられないものはないでしょう。
勝った時の喜び、負けた時のくやしさが、明日の苦しい練習への原動力となるのではないでしょうか。
テニスの試合においては、技術的なものよりも、心理的、精神的なものが大きく影響してくるというのが、私の持論であります。
同レベルの相手との試合においては、特にシングルスの場合、精神力の強い方、ガッツのある方が必ず勝つといっても過言ではありません。
やはり、テニスから何を得るかという点に関して、プレーを楽しむということもありますが、何といっても、逆境を乗り越えるだけの精神力というものを養うことができるということではないでしょうか。
そのためには、やはりシングルスの試合が一番だと思います。
厳しい練習も必要ではありますが、それだとすぐにめげてしまう人も多いですから、特に同好会に入ってくる人は、テニスに一生を捧げようという考えは全然持っていないと思いますから、
「ムチに耐えろ」
というのは無理な話です。
やはり、アメをもらってからでないと、変態といわれる人以外は、ムチを喜ぶことはできません。
テニスは、メンタルなスポーツでありますから、パープリンであってはいけません。

テニスのおもしろさは、頭を使い、臨機応変なプレーを展開できることにあります。
ここでは、私の5年間のテニス生活並びにテレビゲーム、そして2500年を経た現代にも通用する孫子の兵法から、試合に勝つために必要不可欠なものを少し紹介してみるとしましょう。
全部紹介するにはスペースがありませんし、私の作戦が読まれてしまっては非常に困ることになるので、ほんの少しだけです。
試合は始まる前から始まっている
まず、よく言われることに、
「勝敗は戦う前に決しているものである」
というのがありますが、試合の前にあっては、さまざまな情報を分析し、相手の得意技、必殺技、秘密兵器、凶器の有無などをボディーチェックし、相手の作戦を読み、それに対する対応策を立てておくことである。
そしてまた、初対面の相手との試合においては、相手の容姿、風貌、スタイルなどに圧倒されないことである。
相手がいくらきまっていても、
「かっこだけだ」
と自分に言い聞かして、自分の方がきまっていると納得して、精神的優位に立って試合を進めていけばいいのです。
そして、Tシャツにランニングパンツといった、とてもテニスをやる格好ではない格好で、相手に油断をさせるという手もあります。
内部の試合においては、日ごろの練習から相手の嫌がるショットを探り、また自分の正体を探られないようにしなければなりません。
そして、試合になれば、相手の弱点をつくことによって、試合の主導権は簡単に手に入ることになっています。
弱点は執拗に攻める
これと似たものに、「一点突破全面展開」といわれる、一か所を集中的に攻撃することによって、そこから全面的に勝利を得るというやり方があります。
相手の弱点を執拗なまでに攻撃することによって、相手を精神的にまいらせて、スランプに陥れるというやり方である。
これは、テレビゲームのブロック崩しの攻略法でもあります。
外からはなかなか崩せない城壁でも、内からは簡単に崩れるものです。
このように、内から攻めるというのがセオリーです。
それと、基本的には球をよく見ることです。
そして、ワンパターンの連続となっても、決して根負けしないことです。

ダブルスの場合においても、二人ともうまいということはあまりありませんから、弱い方を集中攻撃すれば、必ずそのうちにボロを出して、二人のコンビネーションが悪くなり、二人の深いきずなが切れてしまえば終わりです。
私の場合も、私が集中攻撃を受け、非常に苦しくなる時もありますが、私のペアのYの場合、パープリンですので、私がいくらミスをしようとも全然気にしないばかりか、自分のミスも全然気にしないので、少し困る時もあります。
流れを変えるには奇策も必要
次に、相手に主導権をとられ、このままいけば負けは見えているという時には、思い切った手に出るというのも一つの手です。
流れを変える。
重要なことです。
パチンコにも波があるように、テニスにも流れがあります。
この流れを変えるのには、一本のショットで変わる時もあれば、なかなか変わらない時もあります。
パチンコでも台によってさまざまで、タバコを一服吸うと変わる時や、トイレに行くとか、台をゆするとか、いろいろな策を講じてスランプを乗り切るのと同じです。
また麻雀においても、どうしてもついていない時には、ポンとかチーとか、とにかくむちゃくちゃをするのです。
そうすると相手はペースが乱されるといって、非常にやりにくそうにします。
それが微妙に影響して、次第についてまわってきます。
テニスの試合においても、相手のペースで試合が進んでいる時には、奇策を用いてペースを崩さねばなりません。
それには、サービスダッシュ、ドロップショット、チョビショット、ものすごく高い天まで届くようなロビングなど、いろいろな手が考えられますが、自ら墓穴を掘るということも少なくありません。
でも、何もせずにそのまま終わってしまうより、いいではありませんか。
「およそ戦いは、正を以って合い、奇を以って勝つ」
とあるように、奇とは、望ましい状況をつくりあげる手段でもあるのです。
そして、一本の窮地に追い込まれたショットから、勝ちを拾うということもあるのです。
ここに、テニスのおもしろさがあるのです。
相手の性格まで読む
次に、
「相手の性格を逆用して攻めよ」
という方法も有効です。
よく知っている相手ならばともかく、初めて顔を合わせる相手の場合には緊張するものであるが、最初の1、2ゲーム目は、相手がどのようなテニスをするのかということを探り、また、試合前の態度、言動から相手の性格を見抜き、その性格を逆撫でするようなテニスをすることが必要です。
また、相手の性格を利用することも必要です。
例えば、今、人気絶頂のインベーダーにしても、23発目で300点のUFOが出てくるとか、一番下までインベーダーが降りてくればミサイルが当たらないとか、その他もろもろの性格を知れば、おもしろさも倍増しますし、高得点をマークすることもできます。

しかし、すべてのインベーダーがタイトーであるとは限らず、いろんな性格のインベーダーゲームがあるので、その性格に早く気づくことが必要です。
しかし、機械ですらこれだけの性格を持っておるのですから、人間の性格を見抜くことは非常に困難なことですが、テニスにより人の性格を見抜く訓練をしておけば、実社会に出て役立つことは言うまでもありません。
テニスがおもしろければ、うまくなる
以上が私の実践論でありますが、テニスの技術の進歩と、テニスに対する愛情との間には相関関係がありますから、
うまくなればおもしろい。
おもしろければ、うまくなります。
ですから、テニスがうまくなるには、どの方面からでもいいですから、テニスをおもしろいと感じることです。
勝つためなら、少しくらい「くさく」てもいい
やはり試合においては、きれいな内容で、見ている方もやっている方もスカッとするような試合をしたいと、誰しも思うものですが、できればその方がいいのですが、背に腹は変えられませんから、勝つためには、くさい、きたない試合も仕方がないと思うのです。
相手から、
「きたないぞ!!」
とか、
「くさいやつや!!」
とか声を浴びせかけられても、
「くやしかったら勝ってみい!!」
とやり返すぐらいでないと、厳しい世間を渡ってはいけません。
テニスの参考書には、柳恵四郎著の『驚くべきテニス』をお薦めいたします。
それでは、みなさん、
「やってみなはれ、みとくんなはれ。」





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