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硬庭、後転、そしてナースキャップ|中井基子

yasunoritanaka
4月1日
読了時間: 4分

原題:私のまわりのこと PartⅡ

高校時代は硬式テニスを少し敵視していたのに、大学ではなぜか硬庭の世界へ。百科事典を鉄アレイ代わりに鍛え、やがては“怠慢打ち”を覚え、気づけば卒業も間近です。そんな同好会生活の一方では、阪大病院で看護実習が始まり、筋肉注射や閉鎖病棟にも向き合う毎日。テニスと医短生活、その両方を中井基子さんらしい明るさとユーモアで綴った一篇です。

「硬庭々々イバルナ硬庭」


「硬庭々々イバルナ硬庭」

これが高校時代、私の大好きだった言葉。

『ソフトテニス』という通信販売の雑誌に載っていたもの。

高校の時、わが軟庭部はたいへんしいたげられていたので、硬庭に対する感情はあまりいいものではありませんでした。

そんな私が今は硬庭をやってるんですから、人生ってわからないものです。

硬庭を始めようと思った時、別にこの同好会でなくてもよかったんです。

違いなんか全くわからなかったから。

当時、同好会と愛好会の掲示板が隣りどおし。

練習日は、片や月・水・木・土。片や月・水・土。

「水曜は9限まであるから……。」

と、木曜に練習のある、この同好会を選んだのでした。

硬式ラケットは重かった


初めてラケットを持った時は、誰でも感じるように、

「重たいなあ」

と思ったものです。

軟庭のラケットとは100gは違うんですから。

ラケットを支える右手はブルブルふるえるし、打ったボールは地面をはうか、オーバーフェンス。

鉄アレイの代わりに分厚い百科事典を使って筋力トレーニングする女子大学生

今まで、

「硬庭なんて当てたらいいだけよ!」

なんてバカにしてたのに、こんなに難しいなんて……と、痛感したのでした。

入会間もない土曜日、投げ打ちをしていた私に古川さんいわく、

「この子、力ないなあ。こらあ鉄アレイしかないで。」

こわい所に入ったなあと思ったけれど、やっぱり他の人に負けたくなかった。

その日からしばらくの間、鉄アレイはないので、代りに一番ぶ厚い百科事典でトレーニングしたものです。

そんな私も今では怠慢打ちを覚え、それしかできなくなって……。

あぁ、あの頃がなつかしい。

つい最近入会したように感じるのに、もう今年の暮れには追い出されてしまうなんて、うそみたい。

みんなと同じ入会金払っているのにナ……。

生協の加入金のように、医短生は半額でOKしたらいいのに。

ハハハ……。

私の好きなもの


私の好きなもの――

寝ること。モロゾフのチーズケーキ。手紙。フライドチキン。浜田省吾のうた。ヨーグルトパフェ。GEMINI。スヌーピー。星占い。HALFのジーンズ。大橋さんの審判。

そして……。

青い空を見ながら一回転


よく晴れた日だった。

サーブを打った私は、ベースライン近くで構えた。

相手前衛のレシーブは大きかった。

が、私は、

「絶対とってやるんだ。」

テニスボールを追って後ろへ下がりコートローラーに乗り上げてしまう女子中学生

と、どんどんバックした。

予想外にレシーブが大きく、

「あきらめようかな」

と思った瞬間、何かに乗りあげた感じがした。

「あ!!」

と思うと、両足と空が見えた。

「青い空だなあ。」

と感心していると、今度は急に芝生が見え、足が地面に落ちた。

何と私は、後ろに置いてあったローラーに乗りあげ、一回、もろに後転したのでありました。

からだの硬い私が、よく無傷でいられたなあと今でも思います。

私が中学二年の時のお話。

阪大病院での実習が始まった

白いナースキャップを組み立てて病院実習の準備をする看護学生

阪大病院での実習が始まった。

水色の実習着、白のナースキャップと不釣合な格好で、病院内をウロウロしてます。

ナースキャップは、元からあのような立体的な形をしてるのではないんです。

のしいかのような、ベロンとした布を組み立てるんです。

頭へは、ピン3本でバッチリ止まります。

「数うちや慣れる、筋肉注射」


これが最初の実習地、外科で感じたことです。

注射なんか、学校で数回しただけ。

不安がないはずがありません。

が、開き直りが大切です。

学校では友達同志という気安さから、部位を消毒し、空気を抜き、さあ刺そう、という段階にまた不安になり、

「ここでいいんだろうか」

と、いじくりまわす。

これを病院ですると、患者さんが恐がります。

アルコール綿でふかれてから、針が刺される時間までが長いと不安になるでしょう!?

そうなんです。

思いきりが大切なんです。

幸い私は大ざっぱな性格なので、ここぞと決めたら即、ブスッとやれました。

何とか事故もなく、一ケ月の実習を終えた時、

「数うちや慣れる」

と感じたのでありました。


今は精神・神経科


現在、精神・神経科で実習しています。

閉鎖病棟――病棟の入口にカギがかけられる――の中で、

「このままここに残ったらどうしよう。」

と思いながらも、楽しくやっています。

ナースキャップの謎を知りたい方、おヒマな方、一度阪大病院へどうぞ。

御案内いたします。

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