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負け方を知れば、勝ち方が見えてくる?|家治川 彰

yasunoritanaka
6月22日
読了時間: 4分

原題:下手になるには

「どうすれば上達するか」ではなく、「どうすれば下手になれるか」を考えてみる――。豪快なボカ打ち、脚を使わない練習、不安を抱えたまま試合に臨むことなど、負けるための秘訣を逆説的に並べながら、普段の自分のテニスを鋭く振り返ります。失敗の原因を笑いに変えつつ、最後にはそのイメージに逆らってみようと決意する、ユーモアあふれるテニス論です。

上達法を読んでも、コートでは


どうすれば上達するか、そして試合に勝つには……という本は汗牛充棟、ある。

(知ったかぶりをすると読んでくれない見本に……)

読んだ時には、ふむふむと頷き、いかにも名プレーヤーになった気分でいるのに、いざコートへ入ると、

「あっ、悪い!」

「ゴメン」

……で、二、三分も打たないうちに、美しいイメージは姿を消し、現実の自分がコート内をもがく。

「一体、俺、うまくなるんかなあ」

と、ふと疑う。

それでは一度、今後、練習を通じて下手になるにはどうすればよいか、考えてみてはどうだろう。

(練習もせずに下手になろうなんて、もってのほかだ)

第一に、ボカ打ちすること


まず第一に、練習ではボカ打ちすること。

低い球であろうが、高いバウンドであろうが、躊躇しない。テニスには豪快なスピードが欠かせない。

特に相手が強打してきたら、相手の顔を一度にらみつけ、

「何くそっ」

と、全力で打ち返す。

クレーコートで豪快なボカ打ちをしてボールをバックアウトさせる学生

大部分はバックアウト、たまにネット、まれにエースとなる。

この一発のエースを何よりの楽しみに練習しておれば、不安定なストロークを身につけることができる。

しかる後に試合に臨めば、何発目にバックアウトするか、本人にも楽しみである。


脚は極力使わない


次には、脚を使うのを極力避けること。

スタンスの狭い、腰高の姿勢はできている。あとは自分の位置をできるだけ動かずに、ボールを打てばよい。

遠い球にはよろめきながら、近くて低い球はプロ顔負けのハーフボレーで返球。

恐らく練習の相手は、いやな顔をしてくれる。

普段こういう練習を重ねるだけでも、試合では安定して相手にポイントを与えることができる。

絶好球と見れば有無を言わずボカ打ちでバックアウト。ちょっと振り回されるだけで、よろめき打ちとなるのだから。

試合に負けるには


ところで、試合に負けるにはどうすればよいか。

勝とう勝とうとあくせくしても、どうも勝てない。

「俺はダメだろうか?」

そうだ、おまえはダメだ。

ならば……。

一つ、気分転換といこう。

試合に負けるためには、何といっても調子の悪そうな顔をすること。

何でもない球にミスを重ね、そのたびに自分を責めればよい。

敵はやりやすくなる。

「あいつに返せば、いつかミスしてくれる」

という安心感が自信を生み、さらには試合の主導権を生む。

不安を抱いておく


また、

「自分は負けるのでは……」

という不安を常に抱いておくこと。

例えばネットダッシュされた場合、相手はきっと俺の球を見事に決めるだろう、と信じ込むだけでいい。

ボールはそこへ吸い込まれ、以心伝心、敵は期待通りエースを決めてくれる。

心の動揺や、かんしゃくを顔に表すのも一つの手だ。

こっちがカーッとなっている時は、不思議と相手は落ち着くものだ。

決して無表情でいてはならない。

ミスに対しては涼しい顔、実はまぐれ当たりのエースであっても当然という顔をしておれば、逆に相手に無言の威圧感を与えてしまい、不本意にも勝ってしまう。

ここだというポイントでダブルフォールトをするのも、相手に安堵のため息を与えることができよう。

負ける方法なら、いくらでも

俺は一体勝てるのだろうか、と思い悩む人間ではあるが、さて負けるにはと考えれば、ポンポン答えが出てくる。

これはやはり、負けの素質があるのか、それとも経験がものを言うのか……?

根っから素直な人間なので苦労もあろうが、これからは、こうやって相手に勝ちを譲るには、と湧き出るイメージに、ことごとく逆らってみるとしよう。


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