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「こうだ」と言えることはあるだろうか|今井 正幸

yasunoritanaka
6月19日
読了時間: 2分

原題:「この頃思うことの一つ」

「書こうと思えばいくらでもある」と気軽に引き受けたものの、いざ書こうとすると何も書くことがない――。そんな率直な戸惑いから始まる短い随筆です。結婚式で耳にした祝辞をきっかけに、「人は本当に『こうだ』と言い切れるものなのだろうか」と自問する筆者。飾らない言葉の中に、社会人となって間もない頃の謙虚な人生観がにじむ一篇です。

軽く引き受けたものの

大学で旧友と再会し寄稿を頼まれる卒業生

いつでしたか大学で偶然山代君とお会いして、この企画を聞き、いつもの軽い返事で、

「うん、いいよ。」

「書こうと思えば、いくらでもあるから……。」

などと言ってしまいました。

しかし私の場合、どうも人に顧まれたりすると、必ずといっていいほど、

「うん、いいよ。」

と言ってしまい、いつも深く反省しています。

できないことは、はっきりと

「できません。」

と言える人間にならなくては、と思うのですが。

人に書くようなことは何もない


別によく考えなくとも、人に書くようなことは何もないというのが事実です。

結婚式の祝辞を聞きながら考え込む若い社会人

この二月初め、気分転換も兼ねて従姉妹の結婚式のため東京へ行きました。

その結婚式の席で、早大の先生でしたか、新郎新婦に対し、

「愛は二人にとって……」

などと語っておられました。

それを聞きながら、

「よくもまあ、五十も過ぎて人に訓示することができるものだな」

と思いました。

「こう思います」と「こうだ」


人に話をするとき、

「こう思います。」

ということは言えても――

(このことも恥ずかしいことですが)

原稿を書き終え、静かにペンを置く若い社会人

「こうだ。」

と言えることなんて、何もないのじゃないか。

そう、この頃、深く思うのです。

こう書いて読み直してみましたところ、まことに恥ずかしいことを書いたように思います。

自己を、

「これは何かを書くと約束したことだから」

と妥協させて、ペンを置きます。


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