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あの夜の憂うつを書き留めたかった|於勢 好央

yasunoritanaka
6月19日
読了時間: 5分

原題:「横寝考」

誕生日の夜、突然押し寄せてきた憂うつな気持ち。その時に書き留めておけばよかった──そう振り返りながら、自らの性格や劣等感、大学生活への迷いを静かに見つめ直した随筆です。勉強への自信のなさ、周囲との比較、友人関係の変化、そして「自分を動かすきっかけ」を探し続ける思い。華やかな学生生活とは対照的な、等身大の心の揺れが率直に綴られています。

書き留めておくべきだった


私は書き留めておくチャンスを失ってしまったのです。

あの時、書き留めておけば、こんなに後悔しなくてよかったはずなのです。

何故あの晩、あんなことを考えるようになってしまったのかは、まったくわかりません。

誕生日の夜、机に向かって考え込む大学生

日頃うすうす思っていたことなのですけれど、あんなに強く私に迫ってきたことはなかったのです。

あれは今年の二月十一日で、非常にめでたい日だったのに。

(何故かって? 私の生誕日。)

また、その前の十日は兄の結婚式だったのに。

何故あんなめでたい日に、あのような憂うつを味わったのか。

大学に入ってから感じ続けたこと


この憂うつというのは、大学に入ってからずっと私のまわりにまといついていたのです。

これは自分の性格上、仕方ないことだと思っているのですけれど、一種の劣等感みたいなものです。

最初は劣等感なのですけれど、考えているうちに、だんだんと自分のやる気のなさを強く感じるようになってしまうのです。

大学へ入ってからというもの、勉強というものにはあまり接触しなくなってしまったのです。

接触しなかったというより、接触しようとは思わなかったのです。

この原因は、やはり自分のような人間が阪大に入ってしまったと思うことから始まると思います。

まわりには、頭がよいというよりも、よく勉強する、勉強する勇気を持っていると言うべき親しい友人が大勢いたのです。

教養部のうちは、そんなに差も開かなかったと思うのですけれど、学部へ来てからは、まわりの連中は彼らのやるべきことを、すべてとは言わないまでも、ある程度はやっていたのです。

少なくとも、私からはそう見えるのです。

それに実験の報告書に追いまわされて、私は勉強する勇気を失っていたのです。

つまり、私自身で勉強するきっかけを見つけることができなかったのです。

「きっかけ」が欲しい


私のような性格の人間は、何かきっかけがなければ、いつまでも同じことを繰り返すのではないかと私には思えます。

しかし、きっかけといっても、どんなきっかけがあれば動かされるのか、私自身まったくわかりません。

あまりきっかけにこだわっているように見えるかもしれませんが、きっかけは昔から――主として大学へ入ってから――私が必要としてきたものなのです。

これは間違っているかもしれませんが、他に自分が動くようなものが見当たらないのです。

大学キャンパスで立ち止まり、自分の将来を考える学生

他人が私の代わりに見つけてくれるかもしれません。

しかし、他人が見つけてくれたものを、そのままうのみすることは、どうしてもやりたくありません。

そんなこと、できるわけはないのです。

結局は自分で見つけなければならないと思うのですけれど、果たして見つけなければならないかどうかということも、あやふやになってくるのです。

周囲と比べてしまう自分


学部へ移ってから一年がたとうとしています。

これから自分がどうなるのかということが気になるのです。

自分一人のことだけ考えることができれば気が楽なのですけれど、どうしてもまわりの人間が見えるのです。

まわりと自分を比較してしまうのです。

最近になって、私がよく話をする友達が変わったことに気がつきました。

それは実験の班の仲間と話し合わなければならないことが増え、以前よく喫茶店へ行ったり、玉突きをしたりしていた友達と離れてしまったことです。

昔の仲間と接触が少なくなると、たまに話す時など、何故かそぐわないのです。

悪く言えば、仲間はずれにされているみたいに思えるのです。

これは仕方ないことかもしれません。

何故なら、話題も違うし、それ故、話が通じないのですから。

彼らと会った時、私はまた取り残されたように思ってしまうのです。

そんなはずはないと思いたいのですけれど。

あの夜を振り返って


あの晩、私はこのようなことを考えて、一人憂うつにひたっていたのです。

幸い、この憂うつは夜中の三、四時間でさめてしまったのですけれど、以前、中学三年の時にも、この時と同じような気分につかってしまっていました。

その時は、かなり長かったと記憶しています。

多分、二か月はそのまま続いたと思っています。

喫茶店で昔の仲間を静かに見つめる大学生

その時は、同じクラスの女の子が助けてくれたのですけれど、今までの自分を振り返ってみると、やる勇気のなさが強く腰を据えているようです。

この性格を直してみたいと思うのですけれど、また逆に、このような性格を持った人間が一人ぐらい世の中に存在してもよいのではないかとも思うのです。

書くことで何かが変わるなら


本来、このようなことを書いて皆さんに読んでもらうべきものではないと思うのです。

けれど、あえて書いたのは、これを書くことによって、自分の性格に何かプラスされるものがあるかもしれないと思ったからです。

やはり、あの晩、書き留めておくべきだったと今思っています。

どこか違うのです。

何か変なのです。

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