北海道珍道中記|清水万里子・蔵田悦子
原題:北海道珍道中記
学生生協の北海道一周バスツアーに参加した3人の女子学生。旅立つ前は「素敵なおにいさんとの出会い」に胸を膨らませていたものの、現実は予想を大きく裏切る個性派ぞろいのツアーでした。それでも旅が進むにつれ、不思議な仲間との交流や思わぬハプニングが次々と生まれ、忘れられない夏の思い出になっていきます。昭和の学生旅行ならではの自由さと、女子学生らしい軽妙なユーモアがあふれる紀行エッセイです。
北海道への期待と現実
この夏、A子とB子とC子の3人は、生協のバスツアーで北海道一周旅行をした。
学生生協が募集したツアーだから、さぞかしカッコイイおにいさん方がおいでだろうと、期待に胸をときめかせて大阪を旅立ったのだが、3人の期待は、はかなくも消え去ったのであった。

というのは、そのツアーは40人で、そのうち男子というのがなんと7人。(男子諸氏にとっては、すばらしいことかもしれないが……。)それも個性豊かなお方々ばかり……。
そのうえ70過ぎのおばあちゃん連中が4人。
これで3人の受けたショックがおわかりだろう。
個性豊かな旅の仲間たち
では、個性豊かなおにい様方を2、3ご紹介いたしましょう。
Nさんは、○○大学医学部二回生のエリート学生。でも年齢不明。(ある人に言わせると、子供が2人あるとかないとか。)
いつも女の子がかぶるひらひらのついたお帽子をご着用。そして時々「サンタルチア」を大声で歌い出す。
みんなは彼を「先生」と呼んで崇めたてまつっており(?)、彼自身もその気になっているようであった。
「先生」はハイキングのときなど、いつも女の子をたくさん引き連れて先頭を切っていくくせに、必ずといってよいほど道を間違えるのである。そのために何度、弱き乙女たちが危険な目にさらされたことか。
次にTさんは、針灸の先生になるために勉強中の学生さんとか……。この人も年齢不詳。
この人は写真好きで、人でも風景でも片っぱしから撮る迷(?)カメラマン。
おかげで、3人ともこの人が来ると顔を隠す始末。
お目当てはA子かB子かC子か?……いやいや、お目当てはうしろの雌牛だったとか……。
そして、自分が入る写真では、どういうわけかいつも目をつぶる。
Oさんは鹿児島から来た電々公社員。本当に田舎の人という感じで、とっても気がいい。
この人は電々公社に勤めるだけあって、北海道から全国各地の家々にタダで電話する方法も知っている。(私たちも教えてもらったから、知りたい人があれば、こっそりお教えします。)
3人はOさんたちといっしょに、利尻島のある民宿で教わった「しらけ鳥踊り」にちなんで、「しらけ鳥グループ」を結成した。
スリル満点のヒッチハイク?
ある晩のことである。
A子とB子とC子とOさんの4人は、ユースホステルのあまりにひどいお風呂に耐えかねて、タクシーで隣町まで15分もかけて、わざわざ銭湯へ行くことになった。
お風呂から上がって喫茶店に入り、そのあと、お風呂でのぼせたB子がおもしろがって道で手を上げると、驚いたことにローレルの新車が止まったのであった。
そして運転していた若者が、しつこく乗せてやると言ったので、4人は困り果てたが、帰りのタクシー代が惜しくなったので、ちょっと怖かったがその車に乗り込んだ。
ところが、その若者は悪い人ではなかったものの、道路がすいている(というより実際に一台も他の車は通っていなかったのであるが……)のをいいことにして、時速150キロも出して、中央線よりかなりはみ出して運転するのである。
まるでジェットコースターに乗っているかのようだった。

助手席に座っていたC子は、カーブになるごとに半泣きであった。
「今ここで対向車が現れて死んだら、親は何と言って悲しむだろう。同好会の人たちは何と言って喜ぶだろう。」
おどろおどろしい時間は、あたかも永遠に続くように思われたが、実際は5分ぐらいでユースホステルに着いたようである。
その晩、A子はぎゃあぎゃあとわめいていた。
笑いの絶えない旅の終わり
その他にもいろいろと珍事がありましたが、表現力に乏しい私たちゆえ、割愛させていただきます。

最後に4人のおばあちゃん連中についてふれてみると、この人たちは私たちと、
「お友だちになりたいわー。」
と言って、食事の時には故郷からご持参のなら漬をくださったのです。
ポリッとかむと、おふくろの味がしたとか……。
まあ、そんなわけで、期待していたような旅行はできなかったけど、いつも笑いの絶えない珍道中でありました。





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