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夏がくれる、キラッと輝く思い出|岡崎知子

yasunoritanaka
4月29日
読了時間: 5分

原題:夏の日に……

ポプラの緑が濃くなり、街に夏の気配が満ちてくると、理由もなく心がうきうきする。とりわけ好きなのは、これから盛夏へ向かう7月。けれど、高校野球の決勝や百貨店のバーゲンが近づくと、夏の終わりを感じて淋しくなる――。岡崎知子さんが綴るのは、そんな夏への思いと、幼い頃に夢中になった花火の記憶。夜まで遊び続けた子供時代の懐かしさが、花火の匂いとともによみがえります。

7月になると、なんとなくうきうきする


毎年夏になって、ポプラの緑が濃くなる頃になると、なんとなく気持ちがうきうきしてくるのです。

テニスができるからというと、かっこいいけれど、そうではなく、理由もなく楽しくなってくるのです。

だからといって、暑さに強いわけではなく、やっぱり人並みに、

「暑い暑い、どうしてこんなに暑いんだろう」

と半ば腹を立てながら、冷房のある場所を探し求め歩きます。

緑の濃いポプラ並木の下を夏の高揚感に包まれて歩く昭和の女子大学生

でも、冷房にあたると、またその快感がたまらなくなって、

「やっぱり夏はいいなあ」

と、一人で感激したりしてます。

特に7月が大好き。

これから盛夏に向かう時期だし、活気とか可能性に満ちているから。

町を歩く人の顔だって、生き生きしてるみたい。

夏の終わりは、ちょっと淋しい


でも、高校野球の決勝戦が近づき、ポプラの葉が黄色味を帯び出し、あちこちの百貨店でバーゲンが始まる頃になると、

「夏も終わりだな」

って気がして、淋しくなるのです。

私は、とりわけ、終わりとか失望とか諦めの雰囲気が好きじゃないのです。

自分の行動は別としても、友達なんかが、

「頑張るぞ!」

と言ってると、すごくうれしくなるし、反対に、

「もうだめだわ」

と言ってると、私まで悲しくなります。

始まりとか、新しいことが好きなのです。

親の話では、小さい頃から新しいものが大好きで、友達が新しい靴を履いてると、すぐに借りて、うちまで履いて帰ってたそうです。

もちろん、今はそんな癖ないけれど……。

とにかく、四季の中で一番命が短くて、それだからこそ、わくわくするような魅力を持っているのが夏だと思いませんか?

夏がくれる思い出


夏が好きなもう一つの理由は、夏は様々な思い出を作ってくれるということです。

幼い頃から今まで、楽しかったことを思い返してみると、ほとんどが夏のことなんです。

そんないろんな思い出の中で、幼い頃の私の楽しみの一つだった花火のことを、少し話してみたいと思います。

ホラッ、今日も聞こえてきます。

子供達の騒ぐ声が……。

このところ毎晩のことなんですよ。

あんまりにぎやかなものだから、

「あれっ、まだお昼だったかな」

とふっと思い、カーテンを開けると暗かったりして……。

受験勉強の頃は、うるさかったのに


2年前、受験勉強をしていた頃は、子供の声がやかましくって、よく腹を立ててました。

大体、最近のお母さんはこんなに遅くまで子供を遊ばせといて躾が悪い。もっと人の迷惑も考えんとあかん、とかなんとか。

私は音に対してかなり神経質で――というか、やる気がなかったのです――今でも、ラジオを聴きながら勉強する人がいるということが信じられないくらい……。

そんな風に、子供の楽しそうな声に腹を立ててた私だけど、今、落ち着いて聞いてみると、花火のあの何とも言えない匂いとともに、懐しい昔が甦ってくるから不思議です。

花火といえば、まっ先に家を飛び出した


当時の私は、今からは想像もつかないかもしれませんが、かなり遊び好きの、おてんばの部類に入る女の子でした。

花火だといえば、まっ先に家を飛び出して行き、最後の最後まで残ってたのです。

花火の魅力もさることながら、日が沈んでから友達と遊べるということが、もうとにかくうれしくてうれしくて、鬼ごっこをしたり、砂場で空転とか地上回転とかして、全身砂だらけになって、家になだれ込むといった感じでした。

大きくなってから空転なんてしたことないけれど、今やると、もう身体が宙に浮かないんじゃないかなあ……。

でも、もちろん毎日花火を買ってもらえたわけじゃなく、

「今日はだめ」

と叱られる日もあったけど、

「隣りの、のりたかちゃんが持ってるから」

とか言って、8時頃になると居ても立ってもいられなくなり、毎日のように出て行きました。

そうなると、「夏休みの計画表」なんていうものは全く狂うわけで、いつも勉強時間はなしに等しかったような気がします。

今度は「お母さん役」になって


もう少し大きくなって、普通の人なら花火に興味のなくなる年頃になっても、私は花火に火をつけてあげる「お母さん役」ということで、やはり毎日のように外へ出て行きました。

その頃は、一人前の大人として火を扱わせてくれるということがうれしくって、姉さん気取りで小さい子のお守りをやってたんです。

今から考えても、

「単純やったなあ」

と、自分にあきれてしまうのですが……。

キラッと輝くような思い出を


花火というと、ひたすら遊びに熱中していた幼い頃を思い出します。

夏がやって来ると、何かしら懐しい想いが胸をつきあげてくるのは、そのせいだと思うのです。

どんなに小さくつまらないことでも、キラッと輝くような思い出を残したい。

暑さにも、日焼けにもめげず、楽しく夏の日を過ごしたい……。

そう思いませんか?

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