悪口の果てに「同好会って、居心地いいなあ」|飛鷹 翔
原題:十人の仲間 PART2 暴露編
昭和54年秋に書かれた「十人の仲間たち」から半年。北中杯を経て実力ランキングにも変化が起こり、仲間たちはそろって四回生になりました。ところが、なぜか彼らは相変わらず毎日のように練習に現れる――。今回はテニス、麻雀、童顔、おじん度、芸、TVゲーム、そして「かっこ良さ」まで、仲間同士を勝手に比較する暴露編。悪口を重ねたその先に残るのは、やっぱり同好会への居心地の良さでした。
PART1から半年、No.1は誰になった
前作PART1を書いたのは、昭和54年の秋。
その後、時も経ち、現在55年も5月、連休恒例の強化練習を迎えようとしている。
その間、54年度北中杯も行われ、この10人のランクも多少の変化を遂げた。
そして、この伝統ある北中杯で赤コーナーのチャンピオンとなり、現在、同好会の押しも押されぬNo.1となったその人は、PART1ではNo.3であった「S・A」くんなのである。
その絶対に見破られず、届くことのないチョビ、力強いフォアハンドストローク、そして、決してフットフォールトのないサービス。
何を取っても彼は、No.1の名にふさわしい同好会の鏡なのである。
何と言っても、北中杯の余勢をかって家を新築したのは有名な話である。
No.1にはNo.1にふさわしい生活環境。こうでなくては、コンスタントに力を発揮することは難しいのだ。

しかし、彼は大変やさしいがため、挑戦者が現れるたびに“わざと”金星を献上するのである。
我武者羅に強いだけがNo.1ではなく、心の余裕が必要なのである。
どちらにしても、彼が真のNo.1であるかどうかは、この秋の北中杯で判明する。
皆さん、秋に注目しよう。
四回生なのに、なぜ毎日いるのか
さて、冗談ばかりの前置きはこれくらいにして。
PART1ではまだ三回生だった連中も、皆、四回生となった。
そう、確かに四回生になったはずなのだ。
それなのに、どうして毎日毎日、練習に来られるのだろう。
特に石川・尼崎・河瀬・蔵田・佐倉・大橋、この6人。
他に用事はないのか。これについて究明してみる。
まず石川くん。
経済学部。なるほど、納得。
尼崎くん、河瀬くん。
工学部電子。研究室も決まり、これからは忙しくなる。それでも週2回は来られる。
うらやましい。
さて、お次は蔵田くん。
工学部応物。これからは忙しくて来られない。ふーん、残念。
佐倉くん。
経済学部。なるほど。でも時々、映画の試写会で早退。イヤラシイ。
大橋くん。
基礎工学部制御。まだ研究室も決まらず、実験も始まらないためで、そのうち来られなくなる。それでは、他の用事は?終わりかけてる。おかわいそう。とか何とか言いながら、この四回生はまだまだ来そう。
ここで影の声登場。
「去年までは、今頃四回生は来なくなって――熊本氏は来ていました――三回生の天下だったのになあ。あの学年はいつまで天下をとるつもりだろう。早く来なくなればいいのに。文句ばかり言って、コート整備もせず、自分たちだけでさっさと車で帰り、ちっともおごってくれない。テニスと麻雀とTVゲームしか頭にない脳なし学年め。」
と、憎まれ口をたたかれたところで、次はこの10人の中で、何でも比べをしてみた。
第1ラウンド 安福氏 VS 石川氏――テニスの強さ比べ
え、どうしてNo.1の尼崎くんが入らないかって?
田中(三年男子元キャプテン)に聞け、田中に。
さて、POWERの点では安福氏。
巧妙さにおいて石川氏。
しかし、腕の太さで安福氏一歩リード。
石川氏も、アルバイトにテニスコーチという点で挽回。
けれども、心のよりどころという点で石川氏、逆にリード。
さりとて、安福氏の規則正しい生活も捨て難いので、再びタイ。
結局は、試合をすると安福氏が勝つので、この戦い、安福氏の勝ち。
第2ラウンド 河瀬氏 VS 熊本氏――麻雀の強さ比べ
河瀬氏と熊本氏、特別出演による麻雀強さ比べ。
今年、新春の同好会麻雀大会における実績では、四年目の悲願達成を果たした熊本氏が、もちろん何歩もリードする。
が、その性格上、すぐに熱くなるため、いつも冷静沈着な河瀬氏の逆転勝ち一本。
しかし、今は社会人となり、生活のかかった熊本氏に対して、まだまだ学生気分の河瀬氏がどこまで頑張るか。

この夏合宿あたりが見物。
その二人の間で、変則麻雀の石川氏、あるいは尼崎氏が漁夫の利を得るかも。
夏が楽しみ。
ここに、筆者の予想を書く。
河:熊:石:尼=5:4:1:0
というところ。
ただし、小数点二桁以下は四捨五入した。
第3ラウンド 佐倉氏 VS 大橋氏――童顔比べ
大人っぽく見える方が勝ち。
どちらもシビアな顔をしたときは、わずかながら日常生活に悩みを持つ大橋氏の勝ち。
さりとて、一度表情が緩んだら、ニヤけたら、もうどうにもならない。
大橋氏、完敗。
酒に強い点で佐倉氏リード。
また、年上好みの大橋氏に比べ、高校生好みという点で、早くも中年のイヤラシサをかもし出す佐倉氏、さらにリード。
しかし、年齢を考えると、同じ一浪と一留ではあるが、大橋氏の方が一つ下のため、この点で大橋氏やや挽回。
けれども、少女マンガを購読する点で再びやや後退。
結局は、
「顔だけ見ると、大橋さんの方が若い(幼い)」
という松井嬢の一言にて、大橋氏の絶望的完敗。
佐倉「さびしさに負けた。」
一郎「いいえ、世間に負けた。」
第4ラウンド 山本氏 VS 田路氏――おじん比べ
外見上、誰が見ても山本氏の大勝。
しかし、内面的には、大変気は若く健康な山本氏に比べ、田路氏は、いつもサロンパスを貼り、カゼ薬携行といううわさのもとに、田路氏盛り返し。
結局のところ、人はまず外見で判断するがため、体型から言っても山本氏完勝。
田路氏、負けて安堵のため息。
第5ラウンド 尼崎氏 VS 石川氏――芸人・TVゲーム比べ
「カサブランカ・ダンディ」において一躍、同好会に「しんちゃん」ありと名を上げた尼崎氏。
他にも水戸黄門、ロックンロール、TOKYOほか数々。
なお現在、ローラースケート特訓中。
末には、ローラーディスコが目的と語る。
合宿、コンパが楽しみ。
それに比べて石川氏。
石川踊り、水戸黄門、金のしゃちほことあるが、人前ではあまりしないため、芸では尼崎氏リード。
次はTVゲーム。
尼崎氏、まったくのパターンのみで、せこくせこく高得点を狙う。
しかし、時間がかかり、観戦者にはまったくおもしろくない。
自己満足のTVゲームである。
それに比べ、石川氏の華麗な技術によるスリル満点、
油断大敵・火の用心・赤子泣いても蓋取るな、
のプレーは、見ていて大変おもしろく興奮し、見て、やって楽しい。
TVゲームは石川氏の勝ち。
第6ラウンド 荒木氏 VS 蔵田氏――かっこ良さ比べ
最後に第6ラウンド。
どういうわけか、的を外れた荒木氏と蔵田氏による、かっこ良さ比べ。
外見を見れば、背は高く――少々ねこ背――足は長く、髪はパーマ。
一見、松田優作風の荒木氏の圧倒的、絶対的、世界的勝利。
さりとて、蔵田氏の練習中における他人に対する厳しさ。
自分のことはさておいて。
これはなかなかできない。
この点で少々ポイント。
荒木氏も麻雀・パチンコ・TVゲームと、形勢不利となるとすぐ熱くなるという子供じみたところも、女性が見たら幻滅するだろうから、逆に蔵田氏ポイント。

その上、カリーナを乗り回し、練習に颯爽とペンギン足で現れる蔵田氏、さらにポイント。
洋行の経験もあるという点で、さらにさらにポイント。
一人だけ院へ行くと言っている点で、さらにさらにさらにポイント。
いくらひいきして、蔵田氏にポイントを重ねさせても、結局のところ見れば歴然。
荒木氏、宇宙的勝利。
ああ、10人の眼が恐い
以上、何とか10人の悪口を書き終えた。
内容はすべて絶対的な真実というわけではなく、筆者がおもしろおかしく、一事を万事として書いたのである。
ああ、10人の眼が恐い。
でも……でも、
「同好会って、居心地いいなあ」
検閲 尼崎新一(『ジュリーあましん』)
略歴 昭和33年生 豊中高校出身 独身





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