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鉄格子の校舎から人工呼吸まで――これが私の「医短」です|中井基子

yasunoritanaka
4月25日
読了時間: 6分

原題:私の周りのこと

石橋駅から坂を上った山の中にある「医短」。かつて病院だった本館には鉄格子が残り、看護実習棟はプレハブ、水道からは黄色い水が出る――という、少々すさまじい学生生活が紹介されます。さらに話は「医短生は阪大生か?」という疑問から、独特の授業時間、そして看護科らしく救急処置の話へ。中井基子さんのユーモアあふれる案内で、当時の大阪大学医療技術短期大学部の日常をのぞいてみましょう。

山の中にある「医短」


石橋駅から5分ほど歩き、そろそろ坂にさしかかろうかという所に、山の中に種々の校舎をかかえた医短があります。

医短をよ〜く眺めてみると、二階以上の建物は、一番目につく本館だけです。

山の中に建つ古い本館とプレハブの実習棟を眺める大阪大学医療技術短期大学部の女子学生

この本館は、以前の阪大病院分院の精神科だったんです。

当時の名残りで、ところどころ鉄格子がはまっています。

中は昔の病院そのまま、という感じで、肝だめしするには絶好の場所だと思います。

また、ここのトイレは完全な男女兼用で、入れても出るに出られない、ということが時々あります。

床が抜け、水は黄色い?


本館の裏手の山に、工事現場の飯場らしきプレハブの建物があります。

それが看護実習棟です。

私はまだ見たことはありませんが、ここの床は時々抜けるそうです。

水道管も大正時代のものだそうで、出てくる水は黄色です。

もしみなさんが医短で水を飲むことがあったとしたら、下まで降りて来てからにした方がよいでしょう。

九大や京大の医短のように、最低以下の建物はすぐに新築してもらえるけれど、阪大の医短は最低でとまっているので、いつまでたっても新しくならないのだそうです。

医短生は阪大生なのか?


医短、医短といいますが、正式な名称を知ってますか?

「大阪大学医療技術短期大学部」

これが医短のフルネームです。

「大阪大学」という名がついているけれど、「阪大」ではないみたいです。

学生案内を見ると、医短だけなんか別格で、「併設」という言葉で処理されてます。

医短の教授と、

「医短生は阪大生か?」

というのを話し合ったことがありますが、結局どちらでもなく、時と場合によって阪大生になるのだ、という結論に達しました。

私は同好会では異端児になるのでしょうか?

医短は短大だけれど、修業年数は3年です。

短大=2年、という考えは改めましょう。

「大阪大学衣料技術短大部御一行」


阪大知れども医短は知らず……というのが、まあ普通でしょう。

あの共通一次にも参加せずにいる、陰の存在なのですから……。

しっかし、ひどいのもあるんですよ。

昨年の秋にあった合宿研修でのこと。

羽○のドライブインの看板には、

「大阪大学衣料技術短大部御一行」

なんのこっちゃ!!

チャイムのない学校


医短の魅力は、語学の時間の少ないことでしょう。

英語と独語の2科目必修です。

英語は週1時限、100分で、2年の前期まで。

独語は1年の時は100分、2年になったら50分です。

100分の長さに慣れてしまうと、本当に短く感じます。

チャイムのない古い教室で長時間の講義を受ける昭和の医療技術短期大学部の学生たち

医短には他に75分・150分・200分の講義があり、各学年、各学科で組み合わせが違うため、講義の始まりと終わりは、すべて各教官の時計にまかされています。

当然のことながら、チャイムなんかありません。

だから教養部のチャイムを聞くと、

「高校チックだなあ」

と感じてしまうのです。

ちょっぴり看護科らしいところを


医短のことについて少しばかり書きましたが、これからはBGMのさだまさしのライブテープの中の、

「自分の知識をひけらかすことも大事です」

という言葉に従って、ちょっぴり看護科らしいところをお見せしたいと思います。

救急処置のうち、これから夏にかけてよく起こりそうなものを選んでみました。

その1 鼻血が出た時


まず頭を高くして、仰向けに寝かせます。

この時、出血が多ければ、血をのみこまないように顔だけ横を向かせます。

血液をのみこむと、胃に相当たまってから、はきけとともに嘔吐することがあります。

胃内容といっしょになるため量の錯覚をおこして驚き、軽いショック状態になることもあるからです。

血液をのみこまないようにしてから鼻孔に綿栓をつめ、外から出血している側の鼻翼――鼻のふくらんだところ――を、鼻中隔――孔と孔の間の壁――に向けて軽く圧迫します。

5分ほど圧迫すれば、だいたい止血します。

綿栓は、除去する時に凝血がはがれて再出血するのを防ぐために、表面に薄くワセリンをつけて挿入するとよいようです。

ワセリンのない時は、メンソレータムでもつけたらどうでしょうか。

涙がポロポロ出るかもしれませんが……。

その2 人工呼吸


人工呼吸にはいろいろな方法がありますが、今回は私が実習したMouth to Mouth法についてお話します。

この方法はまず、相手を確認する必要があります。

自分の好みに一致する場合はよいのですが、どうも趣味が合わないといった場合は、違う人に交代してもらうとか、そのまま死んでいただくということになるのですが、それでは問題が残るので、グッとがまんして、口にガーゼをあてるなどして行います。

相手が確認できたら、次の順序で行いましょう。

古い看護実習室で救急処置の実習に取り組む大阪大学医療技術短期大学部の学生たち

① 呼吸の止まった人を仰向けに寝かせ、その横にすわる。

② 頸部――首のこと――から肩にかけて枕かタオル――何重にも折ったもの――を入れ、あごを上に引き上げ、頭頂部を肩の方へ押し下げるようにして気道を確保する。何もなければ自分のひざにのせてもよいのですが、しびれてくるので注意しましょう。

③ 一方の手で相手の鼻をしっかりつまみ、他方の手はみぞおちあたりにのせる。

④ 空気をいっぱい吸いこみ、相手の口から吹き込む。この時、空気がもれないように、相手の口をしっかりふさぐことと、鼻をつまむことが大切です。口をぴったりとふさいだまま呼気を吹き込むのは、かなりしんどいものです。

⑤ 呼気を吹き込んだら口をはずし、みぞおちを軽く押える。

⑥ ④と⑤を、1分間に16〜20回のスピードで行う。2分ほどしていると頭がクラクラしてくるので、気をつけましょう。

呼吸とともに心臓の拍動も停止している時は、心臓マッサージを行います。

ついでに、そのやり方を説明しておきましょう。

① 自分の手をひろげ、左手の甲の上に右手をのせる。これは別に逆でもかまいません。

② 相手の胸骨――からだのほぼ真ん中にある――の下1/3あたりに、さっき組んだ手をのせる。

③ 手で押すのではなく、自分の体重をのせるようにして、のせた手が3cm位沈みこむくらいまで押す。この時、指先よりも掌の方に力が入るようにする。これを1分間に約60回の割合で行う。

心臓マッサージの場合、相手と自分の体格をよく比較しなければなりません。

また、あまり熱心にやりすぎると肋骨骨折をおこす危険があるので、注意する必要があります。

人工呼吸はしんどいけれど、知っていれば必ず役に立つと思います。

回りの人をひっつかまえて練習しておき、機会があれば挑戦してみてはどうでしょうか!?


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