鉄格子の校舎から人工呼吸まで――これが私の「医短」です|中井基子
原題:私の周りのこと
石橋駅から坂を上った山の中にある「医短」。かつて病院だった本館には鉄格子が残り、看護実習棟はプレハブ、水道からは黄色い水が出る――という、少々すさまじい学生生活が紹介されます。さらに話は「医短生は阪大生か?」という疑問から、独特の授業時間、そして看護科らしく救急処置の話へ。中井基子さんのユーモアあふれる案内で、当時の大阪大学医療技術短期大学部の日常をのぞいてみましょう。
山の中にある「医短」
石橋駅から5分ほど歩き、そろそろ坂にさしかかろうかという所に、山の中に種々の校舎をかかえた医短があります。
医短をよ〜く眺めてみると、二階以上の建物は、一番目につく本館だけです。

この本館は、以前の阪大病院分院の精神科だったんです。
当時の名残りで、ところどころ鉄格子がはまっています。
中は昔の病院そのまま、という感じで、肝だめしするには絶好の場所だと思います。
また、ここのトイレは完全な男女兼用で、入れても出るに出られない、ということが時々あります。
床が抜け、水は黄色い?
本館の裏手の山に、工事現場の飯場らしきプレハブの建物があります。
それが看護実習棟です。
私はまだ見たことはありませんが、ここの床は時々抜けるそうです。
水道管も大正時代のものだそうで、出てくる水は黄色です。
もしみなさんが医短で水を飲むことがあったとしたら、下まで降りて来てからにした方がよいでしょう。
九大や京大の医短のように、最低以下の建物はすぐに新築してもらえるけれど、阪大の医短は最低でとまっているので、いつまでたっても新しくならないのだそうです。
医短生は阪大生なのか?
医短、医短といいますが、正式な名称を知ってますか?
「大阪大学医療技術短期大学部」
これが医短のフルネームです。
「大阪大学」という名がついているけれど、「阪大」ではないみたいです。
学生案内を見ると、医短だけなんか別格で、「併設」という言葉で処理されてます。
医短の教授と、
「医短生は阪大生か?」
というのを話し合ったことがありますが、結局どちらでもなく、時と場合によって阪大生になるのだ、という結論に達しました。
私は同好会では異端児になるのでしょうか?
医短は短大だけれど、修業年数は3年です。
短大=2年、という考えは改めましょう。
「大阪大学衣料技術短大部御一行」
阪大知れども医短は知らず……というのが、まあ普通でしょう。
あの共通一次にも参加せずにいる、陰の存在なのですから……。
しっかし、ひどいのもあるんですよ。
昨年の秋にあった合宿研修でのこと。
羽○のドライブインの看板には、
「大阪大学衣料技術短大部御一行」
なんのこっちゃ!!
チャイムのない学校
医短の魅力は、語学の時間の少ないことでしょう。
英語と独語の2科目必修です。
英語は週1時限、100分で、2年の前期まで。
独語は1年の時は100分、2年になったら50分です。
100分の長さに慣れてしまうと、本当に短く感じます。

医短には他に75分・150分・200分の講義があり、各学年、各学科で組み合わせが違うため、講義の始まりと終わりは、すべて各教官の時計にまかされています。
当然のことながら、チャイムなんかありません。
だから教養部のチャイムを聞くと、
「高校チックだなあ」
と感じてしまうのです。
ちょっぴり看護科らしいところを
医短のことについて少しばかり書きましたが、これからはBGMのさだまさしのライブテープの中の、
「自分の知識をひけらかすことも大事です」
という言葉に従って、ちょっぴり看護科らしいところをお見せしたいと思います。
救急処置のうち、これから夏にかけてよく起こりそうなものを選んでみました。
その1 鼻血が出た時
まず頭を高くして、仰向けに寝かせます。
この時、出血が多ければ、血をのみこまないように顔だけ横を向かせます。
血液をのみこむと、胃に相当たまってから、はきけとともに嘔吐することがあります。
胃内容といっしょになるため量の錯覚をおこして驚き、軽いショック状態になることもあるからです。
血液をのみこまないようにしてから鼻孔に綿栓をつめ、外から出血している側の鼻翼――鼻のふくらんだところ――を、鼻中隔――孔と孔の間の壁――に向けて軽く圧迫します。
5分ほど圧迫すれば、だいたい止血します。
綿栓は、除去する時に凝血がはがれて再出血するのを防ぐために、表面に薄くワセリンをつけて挿入するとよいようです。
ワセリンのない時は、メンソレータムでもつけたらどうでしょうか。
涙がポロポロ出るかもしれませんが……。
その2 人工呼吸
人工呼吸にはいろいろな方法がありますが、今回は私が実習したMouth to Mouth法についてお話します。
この方法はまず、相手を確認する必要があります。
自分の好みに一致する場合はよいのですが、どうも趣味が合わないといった場合は、違う人に交代してもらうとか、そのまま死んでいただくということになるのですが、それでは問題が残るので、グッとがまんして、口にガーゼをあてるなどして行います。
相手が確認できたら、次の順序で行いましょう。

① 呼吸の止まった人を仰向けに寝かせ、その横にすわる。
② 頸部――首のこと――から肩にかけて枕かタオル――何重にも折ったもの――を入れ、あごを上に引き上げ、頭頂部を肩の方へ押し下げるようにして気道を確保する。何もなければ自分のひざにのせてもよいのですが、しびれてくるので注意しましょう。
③ 一方の手で相手の鼻をしっかりつまみ、他方の手はみぞおちあたりにのせる。
④ 空気をいっぱい吸いこみ、相手の口から吹き込む。この時、空気がもれないように、相手の口をしっかりふさぐことと、鼻をつまむことが大切です。口をぴったりとふさいだまま呼気を吹き込むのは、かなりしんどいものです。
⑤ 呼気を吹き込んだら口をはずし、みぞおちを軽く押える。
⑥ ④と⑤を、1分間に16〜20回のスピードで行う。2分ほどしていると頭がクラクラしてくるので、気をつけましょう。
呼吸とともに心臓の拍動も停止している時は、心臓マッサージを行います。
ついでに、そのやり方を説明しておきましょう。
① 自分の手をひろげ、左手の甲の上に右手をのせる。これは別に逆でもかまいません。
② 相手の胸骨――からだのほぼ真ん中にある――の下1/3あたりに、さっき組んだ手をのせる。
③ 手で押すのではなく、自分の体重をのせるようにして、のせた手が3cm位沈みこむくらいまで押す。この時、指先よりも掌の方に力が入るようにする。これを1分間に約60回の割合で行う。
心臓マッサージの場合、相手と自分の体格をよく比較しなければなりません。
また、あまり熱心にやりすぎると肋骨骨折をおこす危険があるので、注意する必要があります。
人工呼吸はしんどいけれど、知っていれば必ず役に立つと思います。
回りの人をひっつかまえて練習しておき、機会があれば挑戦してみてはどうでしょうか!?





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