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有機化学とテニスの間で揺れる春|山田 康子
原題:有機化学とテニスと… 有機化学の試験を目前に控えた薬学部生の頭の中は、化学式だけではいっぱいになりません。試験勉強の合間には、料理教室のこと、専門課程への不安、女性としての将来、そして何よりも大好きなテニスへの思いが次々と巡ります。勉強に追われる理系学生ならではの日常と、テニスを心の支えに過ごした青春の日々が、軽快でユーモラスな語り口で綴られた一編です。昭和の学生らしい率直な感情が、今なお生き生きと伝わってきます。 試験前夜、頭の中は大混線 明日は有機化学と物理化学の試験。どちらも必修専門科目で、先生はオニ。 3.5キロもある有機化学の本を机の上にどんと広げ、黄色やピンクや赤、青ときれいに塗り絵をする。 「このページはちょっと黄色を使いすぎたかな。次からはピンクをもっと使って……」 それにしても、この「メンチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド」というのは固体なのかしら、液体なのかしら。いや、ひょっとして気体ってことも……。 こんなの食べたらきっとまずいんだろうなあ。 どっちにしても今日は徹夜なんだから、あせらずゆっくりやろう。...
yasunoritanaka
6月30日読了時間: 4分


心のモヤモヤと、同好会への思い|西井 隆儀
原題:無題 一人の人物を「冬の部屋に吹き込む冷たい風」にたとえた印象的な書き出しから始まる随筆です。そして話題は、自らの心の内側へと移っていきます。同好会に感じていた魅力の変化、テニスへの技術的不安、仲間との距離、そして自分自身への迷い。学生時代ならではの揺れる心情を率直に綴りながら、最後は古い言葉を引用して静かに締めくくります。若者らしい悩みと誠実さが、そのまま伝わってくる一編です。 冬の部屋に吹く風のように あなたは新鮮でした。一涼の風でした。 でもそれは、春の野の緑に満ちた風ではなかったのです。 冬、窓や戸を閉め切って、ストーブをつけて勉強していて、その暑さに頭が朦朧としてきた時、窓を開け放つ。 外の冷たい風が自分の頰をなで、頭の中をはっきりさせてくれる。 あなたは、いってみればそんな風だったようです。 公害に汚された空気かもしれないけれど、一服の清涼剤だったのです。 だから部屋の中が冷えてしまえば、あなたの存在価値はなくなってしまう。 だけど、いずれまた空気が淀んできて、あなたが必要になるに違いない。 その繰り返しだと思う。 同好会の魅力
yasunoritanaka
6月25日読了時間: 2分


八年間つき合った僕の恋人|小寺 弘章
原題:僕の恋人――ある二十才の青年の衝撃の告白 中学一年で出会い、八年間つき合ってきた「恋人」。高校時代には、ほとんど毎日のようにデートを重ね、自己のすべてを捧げたという。しかし、長い年月の中で二人の間には次第に冷たい風が吹き始める。そして明かされる、恋人の意外な正体とは――。軽妙な恋愛告白から始まり、やがてテニスへの情熱、同好会という組織のあり方、人が目標を持つ意味へと考察を深めていく、ユーモアと真摯さに満ちた長編随筆です。 八年間つき合ってきた恋人 まず初めに、以下に述べることはすべて現実に起こったことであり、フィクションの要素は全くなく、赤裸々なまでの恋愛の告白である。 僕がその恋人と出会ったのは、そろそろ自我に目ざめ始めた中学一年生の時。それ以来、長いもので八年間のつき合いになる。 中学生の頃は、恋人だと自分自身考えたことなどなくて、このことを意識しだしたのは高校になってからである。 今から思えば、高校一、二年の時が、二人の関係において最も実り多き、充実感にあふれた幸せな時期であったように思う。 事実その当時は、テスト期間中か少しの休みを
yasunoritanaka
6月23日読了時間: 10分


小さな心が運んでくれるもの|西川 恵子
原題:無題 木の葉のように震え、今にも飛んでいってしまいそうな「ちっちゃな心」。そんな繊細な心を大切に抱きしめながら、いつか訪れる幸せな恋を静かに願う詩です。後半には、高校時代の友人が作詩したという映画『個人教授』をイメージした「愛のレッスン」が添えられています。青春の揺れる感情と優しさが伝わる、小さな詩集のような一篇です。 ちっちゃな心 ふるえてしまう。木の葉のようにちっちゃな心。 とんでいってしまう。大きな息をしのいで、そんなちっちゃな心。 ガラスの箱に入れましょう。 ビーズ玉のように。 気をつけて。 板のつぎ目に落ちてしまう。 そんなちっちゃな心。 ああ、だけど大切なんです。 私には何より大切なんです。 いつか私にも、幸福な恋ができるなら、 このちっちゃな心が、 きっと、きっと運んできてくれるに違いないのですから。 おまけ 映画『個人教授』より「愛のレッスン」 あなたは 私に 愛することの 楽しさと苦しみを教えてくれた。 だから今私は あなたの目の前から さようならも言わずに消えてゆく。 愛しているから あなたの心が 私のことのように 何で
yasunoritanaka
6月20日読了時間: 2分


心に広がる小さな波紋|辻本 昌容
原題:我が愛の詩集「心の泉」より 好きという気持ち、幸福な瞬間、会えない時間、夜空を見上げる想い――。学生時代だからこそ素直に綴ることのできた恋心が、短い言葉の中に込められています。一篇ごとは小さな詩ですが、読み進めるうちに、一人の青年の恋の移ろいが見えてきます。最後には、筆者が「大好きなミヨちゃん」の作品として紹介する可愛らしい詩も添えられた、青春の詩集です。 一 心の泉 君の投げた小さな石で ぼくの心の泉にできた 小さな波紋は どんどん大きくなって 泉いっぱいに広がったよ 二 いたずら好きの君 好きなんだ とっても。 でも、だめなんだ、ぼく。 君の心がわからない。 ぼくがこんなに想っているのに…… いたずら好きの君。 三 幸福 悲しい日なんて 世の中から 消えてしまえ。 ぼくは今、 幸福だ。 四 心は君のもの 今、ぼくは 君のことを考えています。 きっと君も ぼくのことを 考えてるだろうね。 だって ぼくの心は 君のものだし、 君の心は ぼくのものさ。 五 夜空の星 あの星は 君も見てるよね。 あのキラキラ輝くのが ぼくの星。 その横で かわ
yasunoritanaka
6月18日読了時間: 2分


テニスだけは理想を語れる|荒木 健一
原題:テニスを通して 「テニスとは何か」と問われても、深く考えたことはない。ただ、気がつけば好きになっていた。それだけのこと。しかし、就職を目前に控えた学生生活の終わりに立つと、社会への戸惑いや、大人たちへの違和感、将来への複雑な思いが浮かび上がってきます。そんな中でも、唯一まっすぐ理想を語れる場所がテニスだった――。短い文章ながら、卒業を迎える学生の心情が率直に綴られています。 テニスとは何だろう おれにとってテニスとは何ぞや。 ひょっとすると、これは大問題ではないか。 しかし、おれはこれについて考えたこともないし、その必要性も感じたことはない。 ましてや、これを深刻に考え、更に理論的・哲学的考察を加えることなど、ノミのヘソを探すようなものであり、歯車減速機の設計計算以上にしんどいことである。 ただ言えることは、おれが生まれる前からテニスは存在し、ひょんなことでテニスと出会い、このスポーツを好きになってしまったということだ。 それ以外の何物でもない。 もっとも、その結果としていろいろなことがあったのは事実であるが。 社会人になるということ...
yasunoritanaka
6月17日読了時間: 2分


テニスと歩んだ九年間、そして同好会で見つけた楽しさ|幸田啓子
原題: エトセトラ 就職試験を終えた直後に始まった阪大病院での実習。慌ただしい毎日の中で綴られたこの文章には、中学・高校時代の厳しいテニス生活、そして大阪大学テニス同好会で過ごした自由で楽しい三年間の思い出が、率直な言葉で語られています。勝利に涙した真剣勝負の記憶と、仲間と笑い合った芸能生活。テニスに青春を捧げてきた筆者だからこそ感じた「競技としてのテニス」と「仲間と楽しむテニス」の違いが、飾らない文章から温かく伝わってきます。 実習に追われる毎日 十一月一日に就職試験を終え、ホッとひと息つく暇もなく阪大病院で実習が始まりました。 なにしろ石橋までしか通ったことのない子で、その上、車ばかりに乗っていて足も退化してきているので、毎朝阪大病院へたどり着くだけで精一杯です。 病院では、「梅毒は感染しないか」「血清肝炎は大丈夫か」と恐ろしげな話もあり、一日一日のレポートはたまる一方。そんな毎日の中でこの原稿を頼まれ、じっくり考えて書く暇もないので、思いつくまま気の向くままにペンを走らせています。 だからテーマは「エトセトラ」……。 中学時代――軟式テニス
yasunoritanaka
5月26日読了時間: 5分


テニスが導いた不思議な縁|安福哲男
原題: 偶然のみの人生 「なぜテニスを始めたのか」と振り返ると、その答えは「偶然」だった――。中学時代の英語の先生との出会い、高校テニス部への入部、そして大学で大阪大学テニス同好会に入ったことまで、人生の節目には思いがけない偶然が積み重なっていました。軽妙なユーモアを交えながら、「偶然」と「必然」について考察した、学生らしい瑞々しいエッセイです。 テニスとの出会いは、すべて偶然だった なぜ同好会に入ったのか。どうしてクラブに入らなかったのか。 それは、ひとえに気まぐれのせいである。 偶然に同好会の存在を知らされたからである。 もし同好会がなければ、今ごろどうしていたことか。 同好会に入ったのは、全くの偶然なのである。 英語の先生がテニス部をつくった テニスを始めたのは、今から七年前、中学一年生のとき。 その年に転任してこられたH先生がテニス部をつくられた。 そのH先生が、たまたま英語の先生だったから、テニスをやるはめになってしまった。 中学一年生といえば、英語を習う最初の年である。 誰もが英語に不安を抱いていたし、もちろん僕も例外ではなかった。.
yasunoritanaka
5月25日読了時間: 4分


風の中でつかんだ、生きるという感覚|渡辺義嗣
原題:「オレとオートバイ」 さわやかな風が吹く頃になると、無性にオートバイに乗りたくなる。十年にわたるオートバイとの付き合いの中で、ただスピードを求めていた頃から、やがて「よりよく生きたい」と考えるようになるまで――。危険、緊張、風、振動、そして行為することそのもの。渡辺義嗣さんが、オートバイを通してつかんだ生の実感を、力強く語った一篇です。 さわやかな風が吹くと 毎年、さわやかな風が感じられる頃になると、無性にオートバイに乗りたくなる。オートバイの持つ、あの風の感覚を思い出してしまうのだ。 今年は性懲りもなく4台目のオートバイを買ってしまった。(しかも、まだ3台も所有しているのだ。) いい歳をして、などと思わないでいただきたい。そのような考えを吹っ飛ばしてしまうほどの力を、オートバイは持っているのだ。 オートバイは、一過性的なガキのオモチャとして済ましてしまうには、あまりにも大きな可能性を持っている。 フルスロットルの向こうにあったもの オートバイとの付き合いは、もう十年にもなる。 今思えば、オレも最初はいきがって飛ばすしか能がなかったような気
yasunoritanaka
5月11日読了時間: 9分


最後の一日に、何を思うだろう|井上美紀子
原題:流れる時の中で もし、自分の生命があと一日しかなかったら――。残された24時間の中で、幼い頃の記憶、過ぎ去った時間、そして自分が忘れられていくことへの恐れを見つめる。朝から正午へ、夕暮れから夜へと一日が流れるにつれ、思索は「過去」と「現在」、そして未知の世界へ向かって深まっていきます。若き日に綴られた、時間と生命についての静かな一篇です。 あと一日しかないとしたら もし、自分の生命があと一日しかないとします。 自分に残された時間は、かっきり24時間。 一体この一日、どう過ごすのでしょうか。 鳥のさえずりと共に目覚めた私は、はっきりと一日の始まりを認識する。 目覚めというものは、もう再び自分にはやって来ない。 今度眠りにつく時、それは永遠のものとなり、今しがたまで自分がその中にいた暗闇が、ずっと続くのだ。 忘れられていくこと この限りない暗闇の中に落ちていくことは、きっとこわくない。 ただ、今日まで自分の回りにいた人々が、私の愛した人々が、そして、私を溺愛してくれた人でさえも、いつか私のことを忘れてしまう時が必ずやって来る。 私は、それが一番
yasunoritanaka
4月22日読了時間: 4分


チャンス、希望、そして本当の友|北中捷康
原題:詩三題 「風あたりは、今、君に強い。だが、凧だって風があるから飛んだ。」――苦しい時こそチャンスが潜んでいること、目標へ近づくために自分自身へ希望を語り続けること、そして青春の中で本当の友を得ること。北中捷康さんが三つの文章に託したのは、時代を越えて響く人生への励ましでした。同好会という「仲間のいる場所」の意味も重なって見えてくる、力強い三篇です。 チャンスはつかむもの 風あたりは、今、君に強い。 だが、凧だって風があるから飛んだ。 今、君に風あたりが強いのは、君のいよいよ飛ぶ日が近づいているからなんだと、今一度、君自身、自分にいいきかせてみてはどうだろう。 私は日頃から、チャンスというのは、ぎりぎり、もうダメだと思うような時の方が、あとで考えてみると、 「ああ、あのときがチャンスだったんだな」 という気がしてならないことがよくある。 調子のいい時だけがチャンスではない。 何もかもついていて、全てがラッキーな時だけがチャンスなような気がして、そんなうまい話のない、いまがやりきれないと思うことがある。 けれど、そんなうまい話は、そうザラにある
yasunoritanaka
4月15日読了時間: 4分


恋を知らないプーさんの、長い冬|蔵田哲之
原題:クマのプーさん ―大人のためのメルヘン― 恋を知らない16才のクマのプーさんは、冬眠のあいだにウォークマンを聴き続け、春になったら「みなみのかぜにのってはしるような恋」をしようと思い立ちます。やがて出会ったのは、かわいいクマのアイちゃん。ぎこちなく始まった恋は、プーさんを有頂天にし、やがて冬の備えさえ忘れさせてゆきます。可笑しくて、少し切なく、最後には静かな余韻を残す「大人のためのメルヘン」です。 恋を知らない16才のプーさん 今年も暗くて長い冬が来ました。 夏の間にクマのプーさんはいっしょうけんめいに働いて、食べ物をねぐらの中にたくさんたくわえていました。 プーさんは音楽が好きで、特にセイコとトシちゃんがお気に入りです。夏に働いているときでも、合い間に音楽をききながら、 「アー、わたっしの一こーいーはー……」 とうたうのが唯一の楽しみでした。 だけどプーさんは、幼稚園の子がうたっているのと同じで、うたの意味を知りませんでした。 そう、プーさんは恋をしらない、恋に恋する16才の男の子なのです。 去年までのプーさんは、冬眠の間いつもねていて、
yasunoritanaka
4月13日読了時間: 7分


大人になる、その境界線の上で|寺田美杉
原題:境界線上 テレビの「プロポーズ大作戦」を何気なく見ていた彼は、ふと中学一年の頃を思い出します。ある女性アイドルに夢中になり、その姿を追いかけるうちに、少しずつ大人の世界を知り、傷つき、そして現実との距離に気づいていった日々。人は成長することで何を得て、何を失うのか。心の中に残る「透明な部分」を見つめながら、大人と子供の境界線に立つ青年の心を描いた短編です。 テレビの中のキス 彼はいつものように、ぼんやりと部屋でテレビを見ていました。 テレビでは、彼と同じくらいの年齢の大学生が参加する「プロポーズ大作戦」という番組の最中でした。 その日は特別企画なのでしょうか。いつもとはちがって、「フィーリングカップル」というコーナーでは女性の新人歌手をゲストに呼び、「女性新人歌手vs男子学生選抜」と銘うってやっていました。 番組が進み、結果として3組ほどカップルができました。 カップルになると、女子は男子にキスをしてもらうのがこの番組の決まりです。どこにそれをしてもらうかは女の方が決めるのです。 彼が見ていると、3人の女性歌手のうち2人は頰にしてもらいまし
yasunoritanaka
4月5日読了時間: 6分


コンパで知った、私の本性|岡崎知子
原題:コンパと私と同好会 大学3年目を迎え、ふと自分の同好会生活を振り返った岡崎知子さん。初めて聞いた「コンパ」という言葉、お酒への警戒心、女子更衣室のにぎわい、そして気づけば食べることにも芸にも積極的になっていた自分――。温室育ちだった少女が、同好会という新しい人間関係の中で少しずつ殻を破っていく過程を、軽妙な自己分析とともに綴った一篇です。 図書館通いの三回生 大学生活も3年目を迎え、ようやく勉強に振り回される大学生らしい毎日を送っている今日この頃です。 今までは、図書館などテスト中しか利用しなかったのに、最近は非常によく足を運んでいるようです。 もっとも、その半分は、図書館にあるあの華々しい壁紙を貼ったお手洗を利用しに行くのですが……。 というのも、文学部って女の城のはずなのに、なぜか男女兼用なのですよ。 あのしかめっつらした先生方にあんなところでばったり会って、 「やー、元気?」 なんてことになったら嫌ですから……。 まあ、とにかくそういう忙しい毎日の中、ちょっと考えた事、つまり私の同好会における歴史、といえば大げさだけど、成長ぶりみたい
yasunoritanaka
4月4日読了時間: 7分
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